ヘチマの食材としての効果、効能について

ハ行の食材

▼去痰、利尿、美肌

「痰一升ヘチマの水も間に合ず」は辞世句です。子規は結核で36歳の生涯を閉じるまで、痰切りや咳止めにヘチマ水を愛用していました。寝たきりで三尺の世界にしか事象を見ることができなかった彼は、どこか剽軽なヘチマを庭先に見出だし、いっそう惹きつけられたのでしょうか。

ヘチマとは

ヘチマはインドの原産でウリ科の一年生蔓草。江戸時代の中期に中国から渡来したらしいです。夏に黄色い花を開き、秋を迎えるころ長い実をぶら下げます。果実はキュウリに似ていて深緑色の円柱形です。長さが30センチからナガヘチマになると1メートル以上のものもあります。『和漢三才図会』には「老瓜の皮を用いて浴室の垢みがきとなるのみ」とあり、あまり注目はされませんでした。

ヘチマの効果、効能

しかし若い果実は食べられます。鹿児島あたりでは食用として栽培されているほどです。体熱を冷まし利尿の働きもあって、食感も仲間のトウガンに似ています。さらにヘチマの実には暑さで亢進した代謝機能を正常にする消暑剤の作用もありました。細胞を活性化させるサポニンの存在や皮膚病に効くルシオサイドという成分も検出されています。

活用方法

ヘチマは「美人水」の原料としても昔から重宝がられてきました。地上50センチくらいのところでヘチマの蔓を切り、一升瓶にさし込んでおきます。貯まったら煮沸してから濾過し、グリセリンと局方アルコールを加えて混和すると出来上がりです。古川柳に「十五夜は女の顔をしこむ晩」とあるように、中秋の名月あたりがヘチマ水のつくりごろです。

何も混ぜないヘチマ水を少量口に含んでうがいをすると、咳止めになります。子規も咳や痰にヘチマ水が効くことを体験していたのです。「をととひの糸瓜の水もとらざりき」は絶筆三句の一つですが、彼は危篤の床でもヘチマ水をとれなかったと悔いています。中国ではヘチマの実を煎じて催乳や利尿にも使うといいます。

栽培地ではヘチマの葉を焙じて「糸瓜茶」をつくり、お茶代わりにしています。常用すると肌色のきれいな固太りの美人になると云いますが、保証の限りではないです。ただその葉汁は切り傷、湿疹、痔などにも効くそうです。ルシオサイドなどの成分には炎症を鎮める作用もあるので、利用範囲は広がる可能性もあります。あるいは未知の物質が秘められているのかも知れません。

また成熟した果実には繊維がよく発達しているので、水に浸して果肉と種子を除き、浴用の垢落としや靴の下敷きに加工しました。これは工業用の濾過材にもなり、かつては世界中の重油の濾過装置に日本産のヘチマが使われたとか。西日を遮ってくれる糸瓜棚は見るからに涼しく、夏の風物詩でもありました。

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