他人に言えない女性の悩みを解決してくれる「フェムテック」って何?

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2021年の新語、流行語大賞にもノミネートされた「Femtech(フェムテック)」。
リサーチ会社の予測によると、2025年までに5兆円規模の市場になると言われており、投資家や起業家の間でも注目の分野です。

2021年11月に開催されたフェムテックの展示会「Femtech Fes! 2021」は、27カ国から157社が参加し、フェムテック市場としては世界最大級の展示会になりました。
フェムテックの実情や今後の動向を探るべく、この展示会を企画運営した「fermata(フェルマータ)」のCEO、杉本亜美奈さんにお話を伺いました。

「フェムテック」という言葉の力

後藤:フェムテックは「Female」と「Technology」を掛け合わせた言葉で、女性の健康問題を技術で解決するという意味ですね。
先日の展示会には、月経や妊活、ウェルネス、妊娠・産後、更年期、メンタルヘルスなど幅広いジャンルで、世界各国のプロダクトやサービス、ソフトウェアなどが並んでおり、国際的ブームの勢いを感じました。

この「フェムテック」という言葉は、いつ生まれたのですか?


杉本:2016年に「Clue」という月経周期を記録するアプリを開発したデンマーク人起業家Ida Tinさんが名付けたんです。
Clueは、今では世界各国に1200万人のユーザーをもつ月経アプリですが、立ち上げた当時は、投資家たちにそのニーズを説明しても話を聞いてもらえない。
で、そのころ、フィンテックとかエドテックという言葉が流通していたので、それなら、と「フェムテック」という言葉を作ってピッチをしてみたら、「新しそう、ビジネスになりそう」と、投資家や起業家たちの関心が高まったんです。

つまり、こうした言葉ができたことで、マーケットが可視化されたわけです。


後藤:言葉の力は大きいですね。


杉本:はい、言葉と物の力ですね。これまでタブー視されてきたさまざまな女性の悩みや課題に焦点が当たるようになって、そこに産業が生まれていくということです。


後藤:でも、これまで人に言えなかったような悩みを、どうぞオープンにしてくださいと言われても、勇気が要りますよね。


杉本:そこは、言葉や物の力がはたらくんです。

私たちは、起業する前の2019年に、手作り感満載の小さなフェムテックのイベントを渋谷で開催しました。
世界10か国のおよそ20社から商品を集めて、2500円のチケットを自分たちのSNSだけで告知してみたところ、予想以上の反響で120~30人の集客ができたんです。

会場に来られた方々は、展示されている物を介して、ご自身の悩みを語り合ったり、意見交換されたりして、話が尽きないくらいです。
たとえば、生理が重いと感じていたけど自分の出血量がわからない、とか、更年期症状っぽいけどこれで病院に行ってもいいのかな、というような。
悩みは一人ひとり全然違うんですが、これまで持ち続けてきたもやもやしていたものが、言葉や物ができることで理解できたり、一つの課題について話し合うようになります。たぶん、このイベントが日本で初めてフェムテックという言葉が社会に出た時だと思います。

女性たちを救い、健康課題に対して共通の認識が深まる

後藤:女性の一生を考えてみると、生理の悩みから、閉経前後の更年期の悩み、老年期の骨粗鬆症や認知症など、ライフステージのあらゆる場面で課題がありますよね。
でも、それを誰に相談してよいかわからない、あるいは職場や家庭の中で我慢せざるを得ない状況もあるでしょうから、この「フェムテック」の登場によって、解決の糸口があるんだということを知ることは、とても大きな救いというか、希望になりますね。


杉本:これまで、心の中にあるもやもやをどこで話せばいいかわからなかったと思うのですが、言葉と物が出てきたことで、「なるほどね」と理解し、共通の認識が深まります。

そして、これは女性だけでなく、生物学的女性の健康課題を自分ごとにしにくい生物学的男性にも影響をもたらします。
「共視」という言葉がありますが、共通言語を持ち、同じものを見ることで、同じ課題に向き合えるようになるんです。そこから新たなソリューションは生まれ、市場が作られていくんだろうと思います。
「私はこれに悩んでいる」とか「このことを聞いてもいいんだ」というニーズが高まり、そのニーズに合ったサービスやプロダクトが開発・販売される、こうして市場が作られていくわけです。


後藤:ただ、日本ではフェムテックはまだあまり認知されておらず、女性も声を上げにくいように思うのですが、欧米に比べて遅れているという感じでしょうか?


杉本:いえ、日本は、フェムテックに関しては認知が広まっている国だと思います。
確かにこれまではニーズがなかったので、物もなく、物のないところに制度が整うわけはないので、販売における難しさもあるのですが、今は「女性の健康」というウェルネス分野において、厚労省が法整備のために動き始めています。
国を挙げて動いているところは諸外国にはないので、そういう意味では日本はすごく進んでいると思いますね。

そして、これから重要なのは、ユーザーがちゃんと声を上げるということ。フェムテック製品を使ってみる、その情報を共有する、そうしてマーケットが動くと、法整備も進み、プロダクトのレベルも上がる、ということですね。

おすすめのフェムテック商品

後藤:今、話題になっているフェムテックの商品をご紹介いただけますか?


杉本:おすすめの商品には次のようなものがあります。

・ファーティリリーカップ

妊活をサポートする医療機器です。性交渉後の精液の流出を低減します。

商品ページはこちら

・ケーゲルベル

骨盤底筋トレーニング用のアイテムです。

商品ページはこちら

・アクティブモイスチャージェル

年齢を重ねると気になるデリケートゾーンの乾燥に、手軽に使える保湿ジェルです。

商品ページはこちら

・EVE 月経カップ

折りたたんで膣内に挿入して使用する生理用品です。繰り返し何度もつかえます。

商品ページはこちら

今後の活動について

後藤:今後はどのような活動を予定していますか?


杉本:何ごとも小さい成果の積み重ねだと考えているので、たとえば1年後により多くのフェムテックの医療機器が日本で承認されるように、ということや、今は雑品で販売されている「吸水ショーツ」を生理用品として適切な広告表現ができるようにしたいとか、そうした課題を一つずつクリアしていきたいと考えています。


後藤:目の前の課題を一つずつ、ですね。どうぞこれからも日本のフェムテックを牽引していってください。
今日はありがとうございました。


<聞き手>

後藤典子:ジャーナリスト
同志社大学文学部卒業後、編集プロダクションを経てジャーナリストに。政治・経済評論をテーマにした取材・執筆活動を行う。
サプリメントに関する虚偽・誇大な表示のまん延に義憤を感じ、2001年、NPO日本サプリメント協会を発足、中立な情報機関として活動を始める。
マスメディアで執筆・評論を行う一方、講演活動も行っている。

<取材協力>

杉本亜美奈:フェルマータ株式会社CEO
東京大学修士号、London School of Hygiene & Tropical Medicine (英) 公衆衛生博士号取得。
2011年から2年間、福島第一原子力発電所事故による被災者の内外被曝及び健康管理の研究を行う。
日本医療政策機構にて世界認知症審議会 の日本誘致を担当。国内外の医療・ヘルスケアスタートアップへの政策アドバイスやマーケット参入のサポートを専門としてきた。

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