【生薬解説】五味子(ごみし)とは

漢方事典

別名:北五味子(はくごみし)/(朝鮮五味子)

日本では本州の中部以北、北海道、朝鮮半島、中国大陸などに分布するマツブサ科のつる性落葉低木であるチョウセンゴミシ(㊥五味子Schisandrachinensis)の果実。小さな深紅色をしたブドウ状で秋に実ります。

チョウセンゴミシという名は渡来植物のようですが、日本にも自生しており、かつては市販されていたことも。
五味子の名の由来は皮と肉は甘く酸っぱく、核は辛く苦く、全体に塩辛い味があり、五つの味が揃っているためといわれます。
この五味子を北五味子(ほくごみし)というのに対し、日本ではマツブサ科のサネカズラ(ビナンカズラKaasurajaponica)の果実を南五味子(なんごみし)といいます。
また中国ではチョウセンゴミシの近縁植物、華中五味子S.sphenantheraの果実を南五味子と称して代用します。
日本に中国、朝鮮から輸入されているものはすべて北五味子で、日本産の南五味子は現在、流通していません。

果実にはクエン酸、リンゴ酸などの有機酸シザンドリン、ゴミシンプレゴミシンなどのリグナン類、シトラール、カミグリンなどのセキステルペン類などが含まれます。
シザンドリンやゴミシンAには鎮痛、鎮痙、鎮静、鎮咳、抗潰瘍作用があり、近年、ゴミシンAの肝機能改善作用が注目され、急性肝炎の治療薬として研究されています。

漢方では止咳・止渴・止瀉・止汗・固精の効能があり、固渋薬として慢性の咳嗽や喘息、口渇、下痢、多汗、疲労、遺精などの治療に用います。なお民間では滋養強壮に焼酎に漬けた五味子酒が用いられています。(シサンドラ)

鎮咳作用

喘息や慢性の咳嗽に用います。
気管支喘息などで稀薄な白い痰が多く出て、呼吸が困難な場合には乾姜などと配合します(小青竜湯・苓甘姜味辛夏仁湯)。
五味子は斂肺し、乾姜は発散しますが、この両者の配合で鎮咳・平喘の効果が現れます。

慢性の咳嗽で粘稠な痰が多く出るときには麦門冬・天門冬などと配合します(清肺湯)。
肺気腫などによる慢性咳嗽、呼吸困難に人参・黄耆などと配合します(補肺湯)。

高齢者(腎虛)の咳嗽や喘息には六味丸と配合します(都気丸)。

収渋作用

慢性の下痢、発汗過多に用います。
慢性の下痢には補骨脂・肉豆𦸅などと配合します(四神丸)。

暑気あたりで汗が出て倦怠感があるときには黄耆・人参などと配合します(清暑益気湯)。
発汗しすぎて脱水状態になったときには麦門冬・人参と配合し用います(生脈散)。

滋養作用

大病後の陰虚や高齢者の腎虚などに用います。
病後の衰弱などによる倦怠感やるい瘦、脱毛、動悸、不眠などに人参・熟地黄などと配合して使用します(人参養栄湯)。
慢性胃炎などのために舌苔が消失し、亀裂が生じて痛むときには人参・芍薬などと配合します(清熱補気湯)。

脳卒中後遺症による四肢の麻痺や機能の衰えに四物湯に杜仲・蒼朮などと配合し用います(加味四物湯)。

心腎陰虚による不眠、多夢、健忘、煩躁、盗汗、倦怠感など自律神経失調症状に酸棗仁・遠志などと配合します(天王補心丹)。

処方用名

五味子・北五味子・北五味・五味・ゴミシ

基原

マツブサ科SchizandraceaeのチョウセンゴミシSchizandrachinensisBall.の成熟果実。

性味

酸、温

帰経

肺・心・腎

効能と応用

方剤例

斂肺止咳・定喘

①五味子湯・都気丸・麦味地黄丸
肺虚あるいは肺腎両虚の慢性咳嗽・呼吸困難に、党参・麦門冬・熟地黄・山茱萸などと用います。

②五味細辛湯・苓甘五味姜辛湯・小青竜湯
肺寒の咳嗽にも、乾姜・細辛などと使用します。

固表斂汗

柏子仁丸
陰虛の盗汗あるいは陽虚の自汗に、白朮・党参・浮小麦・牡蛎などと用います。

益腎固精

桑螵蛸丸
腎虚の遺精・滑精・頻尿・尿失禁などに、菟絲子・桑螵蛸・竜骨などと使用します。

渋腸止瀉

四神丸
脾腎陽虚の五更泄瀉(夜明け前の下痢)や慢性の下痢に、補骨脂・肉豆蔻などと用います。

益気生津・止渇

①生脈散・清暑益気湯
気陰両傷の口渇・疲労感・元気がない・動悸などの症候に、人参・麦門冬などと用います。

②玉液湯・黄耆湯・麦門冬飲子
気陰両虚の消渇に、黄耆・麦門冬・生地黄などと使用します。

臨床使用の要点

五味子は五味を備えていますが、酸味がもっとも勝っており、温ではありますが潤であり、上は肺気を収斂して咳喘を止め、下は腎陰を渋潤して渋精止瀉し、内は益気生津して安神・止渇し、外は斂汗止汗します。
そのため、肺虚の久咳・咳喘、腎虚の滑精・五更泄瀉・自汗盗汗・津枯口渇、心虚の心悸・失眠多夢に、すべて応用することができます。

参考

①肺虚寒飲の外感による喘咳・希薄な痰には、温肺散寒の乾姜・細辛などと用います。辛散による肺気の耗散を酸収で防止し、酸収による斂肺遏邪の弊害を辛散で防止し、散と収が相互に助けあって止咳平喘の効能を強めることができます。

このことについて古人は「五味に乾姜なくば、肺腎の気すなわち納降することあたわず」と述べています。
ただしこの状況には五味子の量は多すぎてはならず、基本的には3g以下にとどめるべきです。

②五味子と五倍子は効能がよく似ています。五味子は偏温で酸斂のなかに滋養の性質をもつのに対し、五倍子は偏寒で収斂のみに働き、降火するが滋養の効能はないです。

用量

3~9g、煎服。

使用上の注意

①斂肺止咳には少量(1.5~3g)、滋補益陰にはやや大量(6~9g)を用います。

②酸斂ですので、熱邪の喘咳、外感の咳嗽で表裏俱実のとき、麻疹の初期などには用いてはなりません。

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